結論を先に

「良い物を長く使うほうが、結局は安い」。そうなることもあれば、ならないこともあります。決めるのは2つの比です。

  • 値段の比:良い物は、安い物の何倍の値段か。
  • 使える年数の比:良い物は、安い物の何倍の年数 使えるか。

使える年数の比が値段の比より大きければ、1年あたりでは良い物のほうが安くなります。小さければ、良い物のほうが高くつきます。

1年あたりの値段で数える

式は1本です。

1年あたりの値段 = 買った値段 ÷ 使えた年数

仮の数字で並べます。どれも例として置いた数字で、実際の値段や持ちは、物と使い方で大きく変わります。

値段(仮)使えた年数(仮)1年あたり
安い椀1,500円2年750円
漆器の椀(8年で傷んだ場合)15,000円8年1,875円
漆器の椀(12年使えた場合)15,000円12年1,250円
漆器の椀(20年使えた場合)15,000円20年750円

この例では、値段の比は10倍です。だから漆器が1年あたりで安い椀に並ぶのは、安い椀の10倍、つまり20年使えた時です。買い替えを含めた合計で見ても同じです。最初の日から20年間使う分として、安い椀を0年目・2年目…18年目と2年ごとに10個買うと15,000円、漆器を1つ買って20年使うと15,000円で並びます。同じ数え方で12年間なら、安い椀は0年目〜10年目の6個で9,000円、漆器は15,000円で、まだ安い椀のほうが安く済んでいます。

「長く使えば安い」は、値段の差を年数の差が上回った時にだけ成り立つ、ということです。

長く使い込まれた漆器の椀。隣に手入れ用の布。温かいミニマルイラスト
使い込まれた道具の艶(絵)。こうした値打ちは式には入らない。入らないものがあることも、数える時に一緒に覚えておく。

式に入らないもの

1年あたりの値段は、比べやすい物差しですが、全部ではありません。式に入らないものも並べておきます。

  • 手入れの手間:漆器のように、洗い方や乾かし方に気を配る物は、その手間がかかります。手間を時間で数えると、1年あたりの値段は上がります。
  • 買い替えの手間:安い物を何度も買い替えるなら、そのたびに探して選ぶ時間がかかります。こちらは、安い物の側の1年あたりを上げます。
  • 使う時の気持ち:気に入った物を使う時間を、どれだけの値打ちと感じるかは、人によって違います。式には入りません。
  • 途中で手放す可能性:好みや暮らしが変わって、使えるのに手放すこともあります。その時は「使えた年数」が短くなります。

お金の話に置き直すと

ここから先は、データではなく私の整理です。

似た形の計算は、投資信託の手数料にもあります。買う時に一度かかる販売手数料は、持つ年数で割ると、長く持つほど1年あたりが小さくなります。毎年かかる信託報酬は、長く持つほど合計が大きくなります。一度の値段と、毎年の値段を、同じ年数で並べて比べる。椀と同じ考え方です(投資信託の手数料は、2つの数字で比べられる、信託報酬 0.1% の差は 12 年でいくらになるか)。

良い物を選ぶか、安い物を選ぶか。どちらが正しいかではなく、何年使うつもりかを先に決めると、答えが出しやすくなると私は考えています。買う前に「この物を何年使うか」を一度だけ数えてみる。それで、値段の高い安いとは別の見え方ができます。

このサイトは、特定の商品を勧めも否定もしません。

本記事は情報提供です。表の値段と年数は例として置いた数字で、実際の商品の値段や耐久性を示すものではありません。2026年10月時点の整理です。

—— 渋川 整