結論を先に

投資信託の手数料は、2つの数字で比べられます。

  • 販売手数料:買う時に一度かかる手数料。かからない商品もあります。
  • 信託報酬:持っている間、毎年かかり続ける手数料。

金融庁は、金融事業者(投資信託を売る銀行や証券会社など)どうしを比べる共通の指標の中で、投資信託の「コスト」を 販売手数料率の5分の1 + 信託報酬率 と定めています。これは金融事業者を比べるための約束ですが、商品を比べる時も、まずこの2つの数字を並べることから始められます。ただし、持つ年数が長いほど、効いてくるのは毎年かかる信託報酬のほうです。下で、20年持った場合を別に数えます。また、2つの数字が比べるのは手数料だけです。何に投資するか、値動きがどれだけ大きいかが違う商品どうしは、手数料だけでは比べきれません。

観察した事実 ── 金融庁の共通KPIに書いてあること

金融庁の「投資信託の共通KPIに関する分析<2025年3月末基準>」(2026年3月17日公表)から、要点を並べます。

  • 共通KPIは、リスクや販売手数料などのコストに見合ったリターンを長期的に確保できているかを、国民が比較検討できるようにするための、共通の定義による指標
  • 「預り残高上位20銘柄のコスト・リターン」の コストは、販売手数料率(税込)の1/5と信託報酬率(税込)の合計値。リターンは過去5年間のトータルリターン(年率換算)
  • 投資信託を持っている顧客のうち、運用損益がプラスの人の割合は、2024年3月末の約9割から、2025年3月末は約6割に下がった。業態別に見ても全ての業態で下がり、業態ごとの差は広がった
同じ大きさの漏斗が2つ並んだイラスト。左は太い横穴から多くが脇の器へ抜け、右は細い横穴から少しだけ抜けて、下の器に残る量が違う
同じ量を流しても、横穴の太さが違えば、手元の器に残る量が変わる。

数字を置いてみる ── 2つの仮の商品

金融庁の式で、仮の2つの商品のコストを数えます。この式は、一度だけかかる販売手数料を5で割って、毎年の信託報酬と同じ単位に並べたものです。実際に何年持つかは入っていません。

商品A商品B
販売手数料(税込)3.3%なし
信託報酬(税込・年)1.65%0.11%
金融庁の式のコスト3.3% ÷ 5 + 1.65% = 2.31%0 + 0.11% = 0.11%

次に、手元の100万円をどちらかに入れて、20年持った場合を数えます。どちらの商品も、手数料を引く前の値上がりは仮に年4%で同じ、とします。

  • 商品A:販売手数料は買う金額にかかる、として数えます。手数料を含めて100万円払うと、商品に入るのは約96.8万円(96.8万円 × 1.033 ≒ 100万円)。毎年の値上がりから信託報酬1.65%を引くと考えると、20年後は 約154万円
  • 商品B:100万円がそのまま入り、信託報酬0.11%を引くと考えると、20年後は 約215万円

差は約60万円です。手数料を引く前の値上がりを同じとした、この前提の計算では、2つの手数料の違いだけで約60万円の差になります。税金や、信託報酬以外の費用(売買にかかる費用など)は入れていません。実際の信託報酬は日々の資産から少しずつ引かれるので、この計算は概算です。

上の表の「金融庁の式のコスト」(2.31%と0.11%)は、毎年の費用率ではありません。20年持つ場合、商品Aで実際にかかったのは、最初の3.3%と、毎年の1.65%です。年数が長いほど、販売手数料より信託報酬の差が大きく効きます。信託報酬の差だけを長く見た計算は信託報酬 0.1% の差は 12 年でいくらになるかに並べています。

確かめ方 ── 買う前に見る2つの欄

販売手数料と信託報酬は、投資信託の目論見書(交付目論見書)の手数料の欄に書かれています。勧められた時は、その場で決めずに、この欄の2つの数字を書き出して、ほかの候補と並べる。販売手数料は、実際にいくらかかるかを、買う窓口でも確かめておきます。

一般論として ── 勧められた商品との付き合い方

ここから先は、データではなく私の整理です。

勧められた商品が悪い、自分で選んだ商品が良い、という話ではありません。勧められた商品でも2つの数字が小さければ比べて選べますし、自分で選んだつもりでも数字を見ていなければ、比べたことにはなりません。

一つだけ覚えておきたいのは、「今がチャンス」「今月までの限定」といった、急いで決めさせる言い方です。急がせる言い方には、2つの数字を書き出す時間を削る働きがあります。この構造は投資詐欺の手口と、急がせる勧誘の見分け方でも書きました。持ち帰って数字を並べてから決めて、遅すぎることはまずありません。

すでに手数料の高い商品を持っている人は、あわてて売る必要はありません。売ると税金や、NISA の枠の扱いが絡むことがあります(NISAなら税金はかからない、は本当か)。まず、いま払っている2つの数字を書き出すところからで十分です。

このサイトは、特定の投資信託や販売会社を勧めも否定もしません。

一次情報(公式ソース)

本記事は情報提供であって、特定の金融商品の購入・契約をすすめるものではありません。手数料は商品・販売会社・時点によって変わるため、買う前に目論見書で確かめてください。2026年10月時点の整理です。

—— 渋川 整