結論を先に
退職金の税金は、受け取る前に自分で計算できます。
- 国税庁の式は (退職金 − 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得の金額。この金額に所得税の税率をかけます。
- 退職所得控除額は、勤続20年以下なら 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない時は80万円)、20年を超えると 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) です。
- 勤続30年で退職金2,000万円なら、所得税と復興特別所得税は 約15.6万円、退職金の約0.8%です(計算は下に)。
- ただし、勤め先に 「退職所得の受給に関する申告書」 を出していないと、いったん退職金の 20.42% が差し引かれ、確定申告で精算することになります。
観察した事実 ── 国税庁の案内に書いてあること
国税庁のタックスアンサー「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(令和8年4月1日現在法令等)から、要点を並べます。
- 退職所得の金額は、原則として「(収入金額(源泉徴収される前の金額)− 退職所得控除額)× 1/2」
- 退職所得控除額は、勤続20年以下なら「40万円 × 勤続年数」(80万円に満たない場合は80万円)、20年超なら「800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)」。勤続年数の1年未満の端数は1年に切り上げる(例:10年2か月は11年)
- 退職所得は、原則として他の所得と分けて税額を計算する
- 「退職所得の受給に関する申告書」を出している人は、勤め先が税額を計算して源泉徴収するので、原則として確定申告は要らない
- 出していない人は、支払金額の20.42%の所得税と復興特別所得税が源泉徴収され、本人が確定申告で精算する
例外もあります。役員として勤めた期間が5年以下の人の退職金(特定役員退職手当等)は「1/2」の計算がありません。勤続5年以下の人の退職金(短期退職手当等)は、控除後の額のうち300万円を超える部分に「1/2」の計算がありません。前年以前に退職金を受け取ったことがある時や、同じ年に2か所以上から受け取る時は、控除額の計算が変わることがあります。
税率は、タックスアンサー「No.2260 所得税の税率」(令和8年4月1日現在法令等)の速算表を使います。課税される所得金額が195万円未満なら5%、195万円以上330万円未満なら10%(控除額97,500円)です。
数字を置いてみる ── 4つの仮の例
ここからは、上の式に当てはめた仮の例です。どれも、特定役員退職手当等・短期退職手当等には当たらず、ほかの年に退職金を受け取っていない、申告書を出している、という前提です。所得税に、その2.1%の復興特別所得税を足しています(端数の扱いで1円ずれることがあるので「約」を付けます)。どの例も退職所得の金額は1,000円未満の端数が出ない額です。住民税は別にかかります。
| 勤続年数 | 退職金 | 退職所得控除額 | 退職所得の金額 | 所得税+復興特別所得税 |
|---|---|---|---|---|
| 10年 | 500万円 | 400万円 | 50万円 | 約25,525円 |
| 20年 | 800万円 | 800万円 | 0円 | 0円 |
| 30年 | 2,000万円 | 1,500万円 | 250万円 | 約155,702円 |
| 38年 | 2,500万円 | 2,060万円 | 220万円 | 約125,072円 |
勤続30年・2,000万円の例を、式どおりに追います。
- 退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円
- 退職所得の金額:(2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円
- 所得税:250万円 × 10% − 97,500円 = 152,500円
- 復興特別所得税:152,500円 × 2.1% = 約3,202円
- 合計:約155,702円(退職金の約0.8%)
申告書を出していなかった場合は、2,000万円の20.42%、408万4,000円がいったん差し引かれます。確定申告をすれば上の計算との差は戻りますが、受け取った時の手取りは大きく違って見えます。
なお、No.1420・No.2260 によると、2027年(令和9年)以後は防衛特別所得税ができ、復興特別所得税の税率が下がりますが、合計の税率は変わらないと案内されています。
使い道は、急がない
ここから先は、データではなく私の整理です。
まとまったお金が入ると、体が少し急ぎ始めます。全部をどこかに動かそうか。減る前に何かしたい。そういう気持ちは自然に湧いてきます。
このサイトでは、お金を三つの相で見ています(サウナと、お金の三相)。退職金は、働いた年月から温かさが返ってくる「熱」の相です。ただ、サウナ室に一日中いる人はいません。受け取った高揚のまま、その場で全部の形を決めない。一度、外気浴の椅子に座る。
外気浴の椅子で確かめたいのは、まず上で数えた手取りです。次に、これから何年分の暮らしをこのお金で支えるのか。そこまで見えれば、今すぐ要るお金と、来年も再来年もそのまま置いておけるお金が分かれてきます。置いておけるお金なら、今日決める必要はありません。
全部を、すぐには解約しにくい形に入れてしまうと、後で選び直しにくくなります。置き場所を決めるまでの間は、いつでも動かせる形で置いておけば、選択肢が手元に残る。急がないと決めること自体が、ひとつの使い道だと私は考えています。暮らしの余白の数え方は生活防衛資金、『3か月』の根拠は去年変わっていたに、iDeCo を一時金で受け取る時の税金はiDeCo の受け取り方と税金にまとめています。このお金で何年分の暮らしを支えられそうかは、取り崩しを過去の値動きで試す道具に、手取りと毎月使う額を入れて試せます。
一次情報(公式ソース)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月25日に確認):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月25日に確認):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
本記事は情報提供であって、特定の金融商品の購入・契約をすすめるものではありません。個別の税額は、勤め先や税務署、税理士に確かめてください。2026年10月時点の整理です。
—— 渋川 整