結論を先に
複利の計算は、式1本で確かめられます。
- 一括で置いた元本は、元本 ×(1+年利)の年数乗。100万円を年3%で置くと、10年で約134万円、30年で約243万円です。
- 同じ条件を単利で数えると、10年で130万円、30年で190万円。最初の1年は、複利も単利も103万円で同じです。差がはっきり開くのは、10年を過ぎてからです。
- 「月3万円の積立で、30年後に1億円」という広告の数字を式で逆算すると、年12.4%前後の利回りが30年続く前提になります。年3%なら約1,736万円です。
どれも、下の計算機で自分の数字に置き換えて確かめられます。
複利の式と、単利との差
複利は、増えた分にもまた利息が付く数え方です。単利は、最初の元本にだけ利息が付く数え方です。
- 複利:元本 ×(1+年利)^年数
- 単利:元本 ×(1+年利 × 年数)
100万円を、仮に年3%で置いた場合を並べます(小数点以下1桁で四捨五入)。
| 年数 | 単利 | 複利 | 複利の上乗せ |
|---|---|---|---|
| 1年 | 103.0万円 | 103.0万円 | 0 |
| 5年 | 115.0万円 | 115.9万円 | 0.9万円 |
| 10年 | 130.0万円 | 134.4万円 | 4.4万円 |
| 20年 | 160.0万円 | 180.6万円 | 20.6万円 |
| 30年 | 190.0万円 | 242.7万円 | 52.7万円 |
5年では、上乗せは1万円に届きません。20年で約21万円、30年で約53万円です。同じ年利が続くと置く限り、複利の上乗せは後半に集まります。「すぐ増える」「来月から増える」という言い方は、この式の形と合いません。
自分の数字で計算する
はじめの元本・毎月の積立・年利・年数を動かすと、複利と単利の結果が並びます。年利は「こうなる」という数字ではなく、仮に置く数字です。
- 入れたお金の合計
- 単利で数えた場合
- 複利で数えた場合
- 複利の上乗せ(複利−単利)
毎月の積立の式
毎月同じ額を積み立てる場合は、1回ごとに置いておく期間が違うので、式が少し変わります。年利を月に直した月利を i、積み立てる回数を n とすると、
- 積立の結果 = 毎月の額 ×{(1+i)^n − 1}÷ i
上の計算機と同じく、年利は「1年でちょうどその割合だけ増える」意味で使い、月利は「(1+年利)の12分の1乗 − 1」で直しています。年利を単に12で割る数え方もあり、そちらだと結果は少し大きく出ます(月3万円・年3%・30年なら約1,748万円)。この前提で、月3万円を年3%で積み立てると、
- 20年(240回):入れたお金 720万円 → 約981万円
- 30年(360回):入れたお金 1,080万円 → 約1,736万円
同じ式で、30年後に1億円に届く年利を逆算すると、月3万円なら約12.4%、月5万円なら約9.8%です。広告の「億」が派手に見える時は、置いている利回りがどれくらいかを、式で戻して確かめられます。利回りは、将来の約束ではありません。 この点は「元本保証」と「高利回り」が並ぶ勧誘の見分け方で整理しています。
72の法則は、どれくらい合っているか
「72 ÷ 年利(%)で、お金が2倍になる年数が分かる」という72の法則があります。正確な年数(2倍になる年数=log2 ÷ log(1+年利))と並べると、こうなります。
| 年利 | 72の法則 | 正確な年数 |
|---|---|---|
| 1% | 72年 | 約69.7年 |
| 3% | 24年 | 約23.4年 |
| 6% | 12年 | 約11.9年 |
| 10% | 7.2年 | 約7.3年 |
| 20% | 3.6年 | 約3.8年 |
年利が3%から10%前後なら、ずれは1年に届きません。年利1%のような低い所では、72の法則のほうが2年以上長く出ます。20%のような高い所では、逆に少し短く出ます(約0.2年)。暗算の目安としては十分で、細かい計画には式のほうを使う、という使い分けです。
複利は、手数料にも効く
複利は、増える側だけでなく、毎年引かれる手数料の側にも同じ形で効きます。
ごく単純に、手数料を年利から差し引くと考えて、100万円を仮に年4%で20年置いた場合を数えると、
- 手数料 年0.1%:(1.039)^20 → 約215万円
- 手数料 年1.0%:(1.030)^20 → 約181万円
手数料の差は年0.9%でも、20年では約34万円の差になります。実際の投資信託の手数料は日々の資産から差し引かれるので、この計算は概算です。具体的な差は信託報酬 0.1% の差は 12 年でいくらになるかに、別の条件で並べてあります。
一般論として ── 式から読めること
ここから先は、データではなく私の整理です。
式の中で、年数と手数料は自分で決められる部分で、利回りは相場が決める部分です(どの商品や配分を選ぶかで、見込める利回りの幅は変わりますが、その年に何%になるかは決められません)。そして、仮の年利が続く前提で数えると、複利の上乗せは後半に集まります。最初の数年に「思ったほど増えない」と感じるのは、式の形どおりの景色だと私は読んでいます。実際の利回りは毎年揺れるので、後半に上乗せが来るかどうかも、式ではなく相場が決めます。
確かめるための公式の道具
- 金融庁 積立シミュレーション(毎月の積立金額・想定利回り・積立期間から将来の運用資産額を出す。2026年10月25日に確認):https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/tsumitate-simulator/
金融庁の道具は、2025年9月に計算の仕方を一部見直したと案内しています。計算の前提が違うため、この記事の数字とは少しずれることがあります。
本記事は情報提供であって、特定の金融商品や投資手法を勧める・否定するものではありません。記事の年利はすべて仮に置いた数字で、将来の結果を約束するものではありません。実際の結果は相場で上下します。2026年10月時点の整理です。
—— 渋川 整