結論を先に

レバレッジ型の商品は、指数の1日の値動きの2倍(など一定の倍数)を目指す仕組みです。「1年で2倍」や「10年で2倍」を目指すものではありません。この違いから、次のことが起きます。

  • 指数が上がったり下がったりしながら元の水準に戻る相場では、2倍型は元に戻らず、目減りします。 ナスダック100の日々の終値で計算すると、2022年初めから2023年末までの2年間、指数は+3.1%でしたが、「毎日2倍」は−7.5%でした。
  • 逆に、途中の揺れに比べて指数の上昇が大きかった相場では、指数の値上がり率の2倍を超えることがあります。 2016年初めから2025年末までの10年間、指数は+449.7%、「毎日2倍」は+1,707.3%でした。
  • 下がる日が続いた2022年の1年は、指数−33.0%に対して「毎日2倍」は−59.6%で、指数の下げ率の2倍(−66.0%)よりは浅く済みました。上げ下げを繰り返しながら下がる相場では、逆に2倍より深くなることもあります(下の2日の計算と同じ理由です)。

「長く持つと必ず目減りする」も「長く持てば2倍以上になる」も、どちらも言い切れません。結果を分けるのは、期間全体で指数がどれだけ動いたかと、その途中で日々どれだけ揺れたかの組み合わせです。指数の動きが同じなら、揺れが大きいほど2倍型には不利に働きます。なお、「毎日2倍」は日々の値動きを掛け合わせた値なので、同じ日々の値動きなら、順番を入れ替えても結果は変わりません(2022〜2023年の日々の値動きを並べ替えて計算しても−7.5%のままでした)。

観察した事実 ── JPX の留意点に書いてあること

日本取引所グループ(JPX)の「レバレッジ型商品のリスク(ETF)」(2016年5月20日更新)は、こう書いています。

中長期にわたって、レバレッジ型商品に投資をする場合、原指標の変動率とレバレッジ型指標の変動率の乖離が大きくなる可能性があり、留意が必要です。また、原指標の上昇と下落が相互に繰り返されるような相場においては、複利効果により、原指標と比較して指数のパフォーマンスが逓減して行くという特性があり、投資者は利益を得にくくなりますので、留意が必要です。

なぜ目減りするのか ── 2日で確かめる

数字を小さくして、2日だけで確かめます。

  • 指数が、1日目に+10%、2日目に−10%動いたとします。100 → 110 → 99。指数は2日で−1%です。
  • 「毎日2倍」なら、1日目に+20%、2日目に−20%。100 → 120 → 96。2日で−4%です。

指数の下げ(−1%)の2倍は−2%ですが、2倍型は−4%になりました。上げ下げを繰り返すたびに、この差が積み重なります。JPX の言う「逓減」は、この計算のことです。

同じ向きの日が続く時は、逆のことが起きます。指数が2日続けて+10%なら、100 → 110 → 121(+21%)。「毎日2倍」は 100 → 120 → 144(+44%)で、指数の上昇率の2倍(+42%)を超えます。

小さな重りが大きな振れを生むてこ(シーソー)。上にも下にも振れることを示す温かいイラスト
てこは、小さな力を大きな振れに変える。振れは上にも下にも、毎日かかり直す。

ナスダック100の日々の終値で数える

FRED(米セントルイス連邦準備銀行の公開データ)にある、ナスダック100の日々の終値で計算しました。「毎日2倍」は、前の日の終値からの値動きの2倍を、毎日かけ直した値です。

期間(終値の日)指数毎日2倍比べるための単純計算(指数の値上がり率×2)
2021-12-31 → 2022-12-30−33.0%−59.6%−66.0%
2022-12-30 → 2023-12-29+53.8%+128.9%+107.6%
2021-12-31 → 2023-12-29(2年)+3.1%−7.5%+6.2%
2015-12-31 → 2025-12-31(10年)+449.7%+1,707.3%+899.4%
2008-01-02 → 2008-12-31−40.9%−70.8%−81.8%
2000-03-10 → 2002-10-09−82.4%−98.5%−164.8%(−100%を超える、計算上だけの値)

いくつかの読み方ができます。

  • 2022年は下げ、2023年は上げで、2年を通すと指数はほぼ元の水準(+3.1%)でした。それでも「毎日2倍」は−7.5%。指数がほとんど動かなかった一方で途中の揺れは大きく、その分の目減りが残りました。
  • 2016〜2025年は、途中に2022年の下げを含みながらも、揺れに比べて指数の上昇が大きい10年でした。この期間の「毎日2倍」は、指数の値上がり率の2倍(+899.4%)を大きく超えています。
  • 2000年3月の高値から2002年10月の安値までの下げでは、「毎日2倍」は−98.5%。元に戻すには、約67倍になる必要がある水準です。

この計算に入っていないもの

この表は、仕組みを見るための計算で、実際の商品の成績ではありません。次のものは入っていません。

  • 商品の手数料(信託報酬など)や、2倍を作るための費用
  • 配当(FRED のナスダック100は、配当を含まない指数の値です)
  • 為替(ドル建ての指数で計算しています。円で買う商品は、為替の動きも乗ります)
  • 実際の商品と指数のずれ

実際の商品の成績は、各商品の運用報告書や月次の資料で確かめてください。

一般論として ── 表から読めること

ここから先は、データではなく私の整理です。

レバレッジ型を持つ前に確かめたいのは、「指数が上がると思うか」だけでなく、「どれくらい揺れながら、どれだけ上がると思うか」です。2022〜2023年のように大きく揺れた相場では、指数が元に戻っても2倍型は戻りきりませんでした。そして、これからの揺れの大きさは事前には分かりません。

もう一つ、−98.5%のような下げは、元手のほとんどを失う水準です。失っても暮らしが続く額かどうかを、先に決めておく。暴落の時に起きやすい失敗の型はコロナショックの3つの失敗パターンに、「必ず上がる」という前提の危うさは投資詐欺の手口と、急がせる勧誘の見分け方に書きました。

このサイトは、特定のレバレッジ型商品を勧めも否定もしません。

一次情報(公式ソース)

本記事は情報提供であって、特定の金融商品や投資手法を勧める・否定するものではありません。表の数字は過去の指数から計算した値で、実際の商品の成績でも、将来の結果でもありません。2026年10月時点の整理です。

—— 渋川 整