結論を先に
証券口座を開く時に選ぶ「特定口座(源泉徴収あり/なし)」。国税庁の決まりを読むと、違いは次の3つに集まります。
- 源泉徴収ありは、売って出た利益から証券会社が税金を差し引く口座です。その口座の上場株式等の譲渡による所得は、確定申告をしない(申告不要)ことを選べます。口座に受け入れた配当等も、口座ごとに申告するかしないかを選べます。
- 源泉徴収なしは、証券会社が作る「特定口座年間取引報告書」を使って、自分で簡便に申告する口座です。
- 源泉ありにするかどうかは、その年の最初の売却の時までに決めます。年の途中で、源泉をやめることはできません。
口座の中で買える商品や、値動きそのものは変わりません。変わるのは、税金の計算と納め方の手順です。
観察した事実 ── 国税庁の案内に書いてあること
国税庁のタックスアンサー「No.1476 特定口座制度」(令和8年4月1日現在法令等)から、要点を並べます。
税率
- 源泉徴収口座の譲渡益には、所得税等 15.315%(ほかに住民税5%)の税率で源泉徴収されます。
- 源泉徴収口座で受け入れた配当等の源泉徴収(同じ口座の譲渡損失と相殺した後の額に、15.315%・ほかに住民税5%)について、2027年(令和9年)1月1日以後に生じる所得からは、復興特別所得税の税率が1.1%に下がり、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が併せて源泉徴収される、と書かれています。
申告不要と、選ぶ時期
- 源泉徴収口座の中の上場株式等の譲渡による所得は、申告不要にできます。申告するかしないかは、口座ごとに選べます。
- 源泉徴収を選ぶ時は、その年の最初の譲渡の時までに「特定口座源泉徴収選択届出書」を証券会社などに出します。年の途中で、源泉徴収をしない形に変えることはできません。
配当
- 上場株式等の配当等を、源泉徴収口座に受け入れることも選べます(「源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書」)。
申告が要る場面
- 源泉徴収口座の損益を、ほかの口座の損益と相殺する場合や、「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例を受ける場合は、確定申告が必要です。
- 源泉徴収口座で出た譲渡損失を申告する時は、同じ口座の配当等も一緒に申告します。
2027年からの税率の内訳を、数字で確かめる
上の配当等の案内の数字を、所得税15%に当てはめて計算してみます。
- 今:所得税 15% + 復興特別所得税(所得税の2.1%=0.315%)= 15.315%
- 2027年1月から:所得税 15% + 復興特別所得税(所得税の1.1%=0.165%)+ 防衛特別所得税(所得税の1%=0.15%)= 15.315%
内訳は変わりますが、この計算では合計の率は同じ15.315%になります。ただし、No.1476 でこの注記が付いているのは配当等の源泉徴収の段で、譲渡益の源泉徴収の段には付いていません。一方、タックスアンサー「No.2260 所得税の税率」(令和8年4月1日現在法令等)は、所得税全体について「改正前と改正後とで、防衛特別所得税及び復興特別所得税の合計税率に変更はありません」と案内しています。
「源泉なし」で申告しなくていい場合はあるか
国税庁のタックスアンサー「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」(令和8年4月1日現在法令等)では、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる人が確定申告を要するのは、給与所得と退職所得を除く「各種の所得金額」の合計額が20万円を超える場合などです。
No.1900 には、ほかにも申告が要る条件(給与の収入金額が2,000万円を超える人など)が並んでいます。それらに当てはまらず、給与が1か所だけ(全部が源泉徴収の対象)で、ほかの所得の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告が要らない場合があります。ただしこれは所得税の話です。住民税の申告がどうなるかは、お住まいの市区町村の案内で確かめてください。また、20万円の線は、株の利益だけでなく、ほかの副収入などの所得も合わせた合計で数えます。同じページには、この合計に含まれない所得として、「特定口座の源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡による所得で、確定申告をしないことを選択したもの」も挙がっています。源泉ありで申告不要にした利益は、20万円の数えには入りません。
源泉ありでも、申告したほうがよい場面
源泉ありで申告不要を選んだままだと、使えない仕組みがあります。
- 複数の証券会社を使っていて、片方が利益、片方が損失の年:申告して損益を相殺すれば、利益の側で差し引かれた税金の一部が戻ることがあります
- 損失を翌年以降に持ち越したい年:繰越控除は、確定申告をすることが前提です
逆に、申告するとその所得は合計所得金額に入ります。合計所得金額は、扶養の判定や、国民健康保険料などの計算に関わることがあるので、申告する前に、自分に関わる制度の線を確かめておくのが安全です。
一般論として ── 選ぶ時の見方
ここから先は、データではなく私の整理です。
手続きを少なくしたい人には、源泉ありで申告不要、がいちばん手数が少ない形です。損失の繰越や、複数口座の相殺を使う年だけ、源泉ありのまま申告する、という使い方もできます。どちらにするかは、毎年の最初の売却の前に一度だけ決まる、と覚えておくと迷いません。
税の仕組みそのものは投資のもうけと税金・NISAの仕組みで整理しています。
一次情報(公式ソース)
- 国税庁 タックスアンサー No.1476「特定口座制度」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月25日に確認):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1476.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月25日に確認):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月25日に確認):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
本記事は情報提供であって、特定の金融商品や証券会社をすすめるものではありません。個別の申告は、税務署や税理士に確かめてください。2026年10月時点の整理です。
—— 渋川 整